精神疾患と薬に頼らない治療法

精神疾患と薬に頼らない治療法

そもそも精神疾患ってどういうことなのでしょうか? 
精神疾患の薬はどんな効果があるのでしょうか? 
薬に頼らない治療法とはどんなものなのでしょうか? 

ご 紹 介

そもそも精神疾患ってどんなものなのでしょうか? まずは,そこから入っていくことにしましょう。

精神疾患の現状

 身体の病気に対して,心の病気,いわゆる精神疾患と呼ばれるものがあります。 精神疾患には,統合失調症やうつ病といったよく名前を聞くものもあれば,パニック障碍や強迫性障碍,PTSD,対人恐怖や閉所恐怖のような,誰でも縁がありそうなもの, そして,解離性障碍,身体症状症といった余り名前を耳にしたことのない疾患もあります。 現在,推定で300万人の精神疾患患者がおり,その予備軍を加えると3,000万人に達するとも言われ,国民の4人に1人が何らかの症状を抱えているともいえる状態です。

【原因は解明されていない】

 そうした位置づけの精神疾患ですが,その原因はいまだ解明されていないという状況にあります。 どんな症状があるのか,その時,脳内で何が起きているのか,そうした側面では脳神経科学の進歩によりかなりのスピードで解明が進んでいます。 しかし,何故,そうした症状が起きるのかは未だ不明な状態なのです。 例えば,統合失調症においては,初期には妄想・幻覚症状が多く呈されますが,この時,脳内髄液中にはドーパミン(ドパミン)と呼ばれる脳内物質が,通常量を超えて多量に存在しているのです。 このドーパミンは,脳内の黒質と呼ばれる部位が活性化して生成されるのですが,どんな時に何が原因で黒質が活性化するのかは,まだよくわかっていません。 その結果,過剰なドーパミンの生成を抑制する形で対処する薬として,抗精神病薬が開発されているのです。
 

【症状に働きかける薬であること】

 ここで重要なことは,抗精神病薬だけでなく,抗うつ薬・抗不安薬といったものは,原因に働きかけて病気そのものを改善しているのではなく,症状に対して働きかけているものだということです。 毎日定期的に,こうした薬を服用しても,症状が緩和させるだけで,精神疾患の原因に働きかけて完治させるものではないのです。こうした現状が,精神疾患には存在しているのです。

精神疾患は原因が解明されていないようですが,その背景には 何かのメカニズムが働いているようです。

精神疾患の背景にあるもの

 精神疾患の原因を求めて,もう少し広く俯瞰してみましょう。 精神疾患は,身体疾患のように,外的要因としてウイルス感染したり外傷を受けてなるものではありません。 厳密に言えば,脳そのものが,外傷により脳挫傷したり,脳内ウイルスに感染したり,アルツハイマーのように脳そのものが変形することもあります。 しかし,これらの疾患は,精神疾患ではなく,脳外科や神経内科の領域で扱われる疾患といえます。

 解明されていない精神疾患の直接的な原因はひとまず脇において考えましょう。 人間という存在を中心にして,精神疾患の周辺領域にフォーカスを広げて眺めてみましょう。このとき,2つの要素がクローズアップされてきます。

【脳や神経の遺伝的要素】

 ひとつは,脳や神経の遺伝的要素です。症状に影響を与えているのは脳内物質(神経伝達物質)ですが, この脳内物質が出やすい,あるいは,出にくいという面で,そうした体質を生まれつきもっていると言うことが考えられます。 脳のメカニズム的に,脳内物質が出やすい体質・出にくい体質ということが,ある意味で脆弱性をもった体質と呼べるものです。遺伝的な意味での性格ということもできます。この面については,脳神経科学からのアプローチが進み,近年,成果をあげています。

【幼少期からの環境的要素】

 もうひとつは,環境的要素です。症状を生み出し悪循環を形成している考え方や感じ方があります。 こうした悪循環を生み出す考え方や感じ方の発端となるのが,幼少期からの体験です。 人には,幼少期から発達成長の過程で身についた考え方や感じ方,行動習性があります。 その背後には,一貫してつらぬかれている一定の信念といったものがあります。「自分は弱い」「自分は人に好かれない」といった信念です。 それが,現在の様々な状況に直面して,思考や感情の悪循環を作り出しているのです。 この面でアプローチしているのが,認知行動科学です。

 こうした2つの要素を十分にふまえて,精神疾患の原因を追及していくと,投薬治療とは異なる側面からの治療アプローチが考えられてきます。

では,心理療法,特に認知行動療法においては,どんなことが行われているのでしょうか?

認知行動療法での改善治療

 精神疾患の症状を考える上で,頭痛や頭重感,しびれやめまい,立ちくらみと言った症状は,思考や感情の問題ではありません。 こうした症状は,脳神経科学からの対応が必要になります。治療を考える上で,この点にまず留意します。 ご本人の症状をうかがう上で,細心の注意をし,必要あれば,脳神経外科や内科,心療内科をご案内します。 こうした問題がない事が確認できれば,認知行動療法の出番となります。

【アセスメント(検査)】

 一般的に,認知行動療法では,まずアセスメント(査定)を十分に行い,現在の症状ばかりでなく,遺伝的要因,生育歴,幼少時の環境までも十分に査定します。 このアセスメントに基づき,症状の悪循環を概念化していきます。精神疾患がどういう概念に構成されるかと言うことなのですが, これはどういうことかというと,精神医学における精神疾患が,その形態を思考や行動の悪循環として再構成した認知モデルというものがあるのです。 このモデルのどれに該当するのかという見地から,確定させていく作業なのです。 当然この作業の中では,前にお話しした環境的要因,特に信念がどう作用しているのかも,十分に吟味されます。

【改善方針(治療方針)】

 こうして,悪循環の実体が解明されたときに,治療方針が立てられることになります。 考え方や感じ方,信念をどう変えていけば,この症状を生み出す悪循環を変えられるかということになります。 幸い,認知行動療法は,多くの研究者の功績により,どんな手法(技法)を採用すると,この疾患が○○%の確率で改善されるという実証データが存在しています。 これに基づき,どの技法にどの技法を加味してこれを改善するという治療方針を立てることができるのです。 この点が,一般のカウンセリングや心理療法との大きな違いになっています。

【薬に頼らない治療法】

 特に,第3世代の認知行動療法においては,メタ認知や行動分析といった手法に基づいて,よりきめの細かい査定を行い,より確実な手法を用いて改善が図られています (現在一般的に主流となっているのは,第2世代の認知行動療法です)。

 薬に頼らない認知行動療法という手法で,確実に精神疾患が改善できることをご理解いただけるといいですね。

さらに詳しく認知行動療法を知りたい方は,こちらからどうぞ。

【参考】性格や精神疾患の背景要因

症状としての行動パターン

【現在の症状】

 うつ病,対人恐怖や強迫性障碍のような精神疾患,あるいは,被害妄想的な性格,いらつきやすい性格など, こうした現在の状態を症状としてとらえることができます。

 精神医学では,基本的にこの現在の症状を丁寧に詳細に取り扱うスタンスを取っています。 精神疾患の器質的な原因がまだ解明されていないということが,その要因となっており, この結果,現在の症状をいかに緩和するかが,主要な治療目的となっているのです。

【症状としての行動パターン】

 現在の症状に密接に関係するのが,行動パターンです。 様々な状況や出来事,相手の態度に対して人は反応しますが,その中にその人特有の反応を示す部分があります。 これは生まれてから今までの人生の中で,次第に築き上げられたものであり,それが様々な状況に出くわして,行動パターンとなるのです。 この行動パターンを解析することが,現在の症状の発生した原因をつかむ手がかりになると考えられます。

遺伝的要因

【遺伝的性格が行動パターンに影響を及ぼします】

 解析された行動パターンが,どのようにして育まれてきたのかを考える上で,2つの要因が検討されます。 ひとつが生まれ育った環境的要因であり,もうひとつが遺伝的要因です。 遺伝的要因が,直ちに行動パターンとなり発症する訳ではありませんが,環境的要因を育む下地を作り上げるという点で,大きな意味を持っているのです。

 症状・特定の行動パターンがあるとき,特定の脳内物質(神経伝達物質)が出やすい・出にくいという器質的な状態が,そこには存在しています。 いわゆる器質的な意味での体質ということになるのですが,そうした状態は遺伝的要因が大きく作用していることが考えられます。 つまり,遺伝的要因が体質的な脆弱性を生みだし,環境的な要因がそこに作用して,行動パターン・症状が生み出されてくるという構図ができあがります。

【脆 弱 性】

 近年,多発している地震や津波のケースを見ていると,被災された方々の中で同じ状況下にあっても,PTSDを発症される方とそうでない方がおられます。 幼少期からの体験の違いという事もありますが,多くの場合,生まれもったものの違いに依るところが大きいようです。 つまり,DNAの配列,特定の遺伝情報の組合せが一定の形質を作り出すことになり,それが脆弱性を生み出すことにつながるのです。

【神経伝達物質】

 遺伝的要因が作り出す脆弱性は,具体的な器質要因として神経伝達物質の状態という形で出現します。 大脳皮質にはニューロン(神経細胞)が多数存在し,そのニューロンごとに神経伝達物質を内包しています。 そうしたニューロンが互いに結びついて,知識の記憶や思考・判断が行われるのですが,ニューロン間の情報伝達の際に神経伝達物質が使用されるのです。 ここで,遺伝的要因からくる脆弱性がキーポイントになります。 脆弱性という形で,特定の神経伝達物質が出やすい・出にくいという状況が出現し,その結果が行動パターンに結びついてくることになる訳です。 遺伝的な性格が行動パターンを作り上げることに影響を及ぼすと言うことになります。

環境的要因

【環境への対応が行動パターンの元になる信念を形成します】

 人は幼少期から環境の中で育ちます。どんな土地柄,どんな両親に育てられ,どんな家庭環境でどんな家族の中にあるか, どんな学校や先生でどんな仲間に囲まれているか,どんなことに興味を持ちどんな活動をしてきたか,そうした環境が本人に影響を与えています。 この中で育まれた思考のクセが,信念という形で形成されてくるのです。

 この信念が無意識下で,本人の活動を良かれ悪しかれ拘束するようになってきます。同じような状況では同じような反応を繰り返すようになるのです。 こうしたくり返しの中で,無意識に学習されたことが定着し行動パターンとなってゆくのです。

【中核信念】

 信念の形成をもう少し詳しく見ていきましょう。人は状況や出来事に直面すると反応を起こす訳ですが,反応した思考や行動自体が一定の感情を生み出し,その感情に基づいて反応の結果を評価します。 この評価は「自分はこれが苦手である」とか「こんな時は別の方法をとるべきだった」あるいは「自分は他人からこう思われているんだ」といった形のものです。 こうした評価が,多年にわたり数多く集積してくると,単に「苦手」という考えが次第に「能力がない」といった確信のレベルにまで高まってくるのです。 この確信は,実際に本人に「能力があるかどうか」という事実の検証とは全く関係のない次元で展開されていきます。 こうした確信を「中核信念」と呼んでいます。この中核信念が本人の考え方や行動に一定の方向性を与えることになります。これが行動パターンとなる訳です。

【悪 循 環】

 形成された中核信念が,無意識下で行動パターンを繰り返すようになりますが,これが本人や周りの人間にとって,良い影響を与える場合には問題とはなりません。 行動パターンが定着し,それが本人や周りの人間に不快や悪影響を及ぼすとき,これが悪循環となって本人に襲いかかるのです。この悪循環には,2つの質のものがあります。 ストレスから過食をするようになり,過食で太ることを気にして吐く(パージング)行動をとる,そのことが自己嫌悪になってさらに過食が進むというような,現象や事実の面での悪循環があります。 また,特定の考えが行動を引き起こし,そこから特定の感情が生まれ,その感情に引きずられて,特定の思考がさらに加速してしまい,そこから行動や感情が繰り返されるといった, 思考や感情・行動の連鎖という意味での悪循環となる場合もあります。こうした悪循環そのものが,症状としての行動パターンの実体とも呼べるものとなります。

【認知行動療法】

 認知行動療法による治療改善を行う場合には,こうした遺伝的要因や環境的要因を,症状の背景要因として十分に査定・アセスメントし, どの部分に介入することで悪循環が解消するのか,学習された症状としての行動パターンをどう修正することが可能なのかを検討していきます。 これが,臨床としての現場の最前線で,症状を概念化し治療改善することとして行われている事なのです。

 特に,最新の第3世代認知行動療法においては,背景要因の分析の局面で緻密なデータによる分析が重要視されてきています。 「苦手である」から「能力がない」と確信することを,社会通念的に妥当といった形で判断したのが第2世代的な理論でしたが, 「本人が状況のどこに焦点を当てて考えたのか」「苦手だという認識は本人がどういうデータに基づいて判断したのか」 「能力がないと確信に至るのにどんな環境要因がデータ的に存在したのか」といった基礎データを収集し判断します。 また,「選択された行動」についても,本人の置かれた状況(環境)から様々な行動が選択される関係性(可能性)はどのくらいあるのかといったデータに基づき, 選択された行動の問題性が検討されていきます。

 認知行動療法も日進月歩で変化を遂げています。より緻密なデータに基づき,科学的に検証された治療法で,症状や行動パターンが改善されていく方法がとられています。
認知行動療法のお勧め

効果が科学的に実証済み

 認知行動療法は,治験により効果が実証された心理療法です。心理療法といっても,催眠術や洗脳,あるいは,オカルト的なものとは全く違う,より科学的なものです。私どもでは,より緻密な理論と詳細なデータによる取り組む第3世代の認知行動療法と脳神経科学の知識を駆使し,心理の面から治療改善にあたっています。


公的機関が認めるもの

 米国では,精神医学会によって,認知行動療法が抗うつ薬とともに「うつ病(大うつ病性障碍)」の第一選択薬として推奨されています。第一選択薬とは,その病気の治療に当たり,まず最初に使用される典型的な薬のことです。
 また,英国では,認知行動療法の実証性が証明されていることから,認知行動療法士の1万人養成計画が国家プロジェクトとして進行しています。

薬に頼らない治療法

 認知行動療法は,世界的なレベルで,うつや不安障碍,対人恐怖,パニック障碍,強迫性障碍などの治療法として普及しているものです。抗うつ薬・抗不安薬の副作用にお悩みの方,投薬治療によらずに回復したい方,是非一度ご相談下さい。