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 解説・・・・脳の急性疾患











 脳の急性疾患を解説します。

解説・・・・脳の急性疾患

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脳の急性疾患についての解説はここからです。

脳の急性疾患
 脳の急性疾患として考えられるのが,意識障碍です。意識障碍を理解する上で,まず,正常な意識状態ということを確認しておきたいと思います。

【正常な意識】

 意識という言葉は,日常的によく使われる言葉ですが,現在の精神活動全体をさしており,正常な意識とは,よく目覚めている状態といえます。

 すなわち,それは具体的には,
①知覚・・・・まわりからの感覚刺激を敏感にうけとめ,
②注意・・・・注意が行きわたって,周囲の出来事をはっきり見わけ,
③知能・・・・本来の知能に応じた理解力をしめし,
④思考・・・・同じく考え,判断をくだし,
⑤意欲行動・・・・その判断を適切に言語で表現し,あるいは行動に移し,
⑥意識・・・・自分がいま生活している時間,場所,社会的立場や情況を正確に知り(すなわち正しい見当識をもち),
⑦記憶・・・・今おきていることを記憶にとどめ,あとで思い出すことができる
ような状態をいいます。言い換えれば,注意・理解・見当識・記憶などの精神活動がよく保たれた状態にあることになります。この諸条件を満たすとき,意識が清明であるといえます。

 たとえば,テレビ番組がおもしろくて夢中で見ている時,まわりの物音に気づかないことが良くありますが,これはあえて意識障碍とはいいません。また,解離性健忘などの場合も,脳機能の変化を前提とする意識障碍には含まれないと言えます。

○覚醒度の評価
 臨床上では,意識レベルの低下を観察することは大切です。たとえば妄想幻覚がある場合でも,それが正常な意識下で起きているのか,意識レベルの低下に伴って起こっているのかを判断することは重要なのです。意識(覚醒)レベルの低下がある場合には,神経内科疾患や脳外科疾患を考える必要が出てきます。臨床の現場でよく用いられる覚醒レベルの指標は次の2つのものがあります。

①JCS(Japan Coma Scale)(表-1)
 覚醒の程度を9段階で表し,数値が大きいほど意識障碍が重いことを示しています。「JCS100」や「JCS3桁」のように記述します。「JCS3桁」とは「JCS100~300」を指し,刺激をしても覚醒しない状態に相当します。JCSでは,開眼しているか閉眼しているか,閉眼している場合は刺激によって開眼するかどうかが観察のポイントになります。
表-1 JCS(Japan Coma Scale)
Ⅰ 刺激しないで覚醒している状態
  1: ほぼ意識清明だが,今ひとつはっきりしない
  2: 見当識(時・場所・人の認識)に障碍がある
  3: 自分の名前や生年月日が言えない
Ⅱ 刺激すると覚醒する状態,刺激をやめると眠り込む
  10: 普通の呼びかけで目を開ける。
     「右手を握れ」などの指示に応じる。
     言葉も話せるが間違いが多い
  20: 大声で呼ぶ,体を揺するなどで目を開ける
  30: 痛み刺激をしながら呼ぶとかろうじて目を開ける。
     「手を握れ」など簡単な指示に応じる
Ⅲ 刺激しても覚醒しない状態
  100: 痛み刺激に対し払いのけるような勁作をする
  200: 痛み刺激で少し手足を動かしたり,顔をしかめる
  300: 痛み刺激に反応しない

②GCS(Glasgow Coma Scale)(表-2)
 開眼(E),言葉による応答(V),運動(M)の各項目について,それぞれ点数で判定し,「E4V5M6」のように各評価の得点を示すことが一般的です。各項目の合計得点を指標として判定する場合もありますが,この場合には,14点と15点が軽度,9~13点が中等度,3~8点が重度と判断されます。
表-2 GCS(Glasgow Coma Scale)
E.開眼(eye opening)
  4:自発的に目を開ける
  3:声をかけると目を開ける
  2:痛み刺激によって目を開ける
  1:目を開けない
V.言葉による応答(verbal response)
  5:だれか,どこか,いつかに答えられる
  4:会話が混乱する
  3:まとまりのない言葉が出る
  2:言葉にならない声だけが出る
  1:言葉が出ない
M.運動による最良の応答(best motor response)
  6:指示に従う
  5:痛み刺激の場所に手足をもってくる
  4:痛み刺激から逃げる
  3:体を異常に曲げる
  2:四肢を伸ばした状態
  1:まったく動かない

【意識障碍】

 急性の身体疾患(感染症など)にかかった場合,精神症状とその経過には,疾患はいろいろでも,共通する特徴が存在しています。器質性・症状性の精神障碍の急性期には,意識に何らかの問題が生じます。つまり,急性期においては,意識混濁あるいは意識変容を基礎とする症状(せん妄,もうろう状態など)があるため,こうした急性症状の理解が必要です。これらの症状をよく見てみましょう。

1)意識混濁
①軽い意識水準の低下
【症状】共通症状として,話の流れがまとまりなく,感情の表現もその場の状況と不釣り合いなことがあげられます。簡単な会話はふつうにできても,少し長い話になると,時間の順序が混乱したり,物の名前を言い違えたり,計算を間違えたりするなど,軽度の意識障碍が認められるほか,脳波の周波が変化がみられないほど軽いときでも,表情や言動から意識水準の低下を読み取ることができます(一般に,意識障碍があるときには脳波の周波が遅くなります)。

 アルコールによる意識障碍の場合で見てみましょう。アルコールがほどよく入るうちに,同じ話を繰り返したり,相手の言うことがよくわからない感じで,そのうち隅で眠ってしまう。翌日確認しても,記憶が不鮮明なことが多いようなケースがあります。こうした状態は,上記の正常な意識状態の条件に該当しない部分がいくつかあるので,軽い意識水準の低下と考えられます。アルコールの場合ばかりでなく,同じ状態は各種の疾患においてもよくみられます。たとえば,ある疾患では,いつもは活発な人が無表情に黙ってしまったり,昼間からうとうと居眠りをして,よびかけると寝ぼけた返事をすることがあります。別の疾患では,声が大きくなって無闇に笑ったり,喧嘩早くなることがあります。いつもは静かな人が大声で家族を叱ったり,急に立ち上がって手近かの本やコップを投げたりすることがあります。

 参考までに,こうした状態は関連しますので,アルコールを飲んで軽い意識障碍を起こすときのパターンを見ると,アルコールで静かに眠る人は疾患にかかり症状が重くなると昏睡に至りますし,アルコールで騒ぐ人は疾患にかかり症状が重くなるとせん妄に移行する傾向が見られます。

②昏睡にいたる変化
【症状】軽い意識水準の低下の域を越えてさらに低下すると,精神活動が一層不活発になり,からだの動きも少なく,歩行もおぼつかなく,うとうと眠る時間がふえてきます。目ざめているときも,表情に生気がなく,思考散乱となって話の内容にまとまりがなくなり,困惑となって問いかけに応じようと努力しながらなかなか答えられない状態が出てきます。さらに眠りが深くなると,覚醒させるのに強い刺激が必要になり,返事の言葉も聞きとりにくくなります。痛覚刺激にも応じたり応じなかったりする時期を経て,昏睡状態と呼ばれる状態になります。あらゆる刺激に反応せず,瞳孔は縮小して対光反射も消失し,眼球がゆるやかに左右にゆれる状態です。昏睡をもたらした基礎の病変がさらにすすむと,呼吸と心臓機能が停止して,ついには死にいたることになります。

 意識水準はたえず変動することから,軽い意識水準の低下から昏睡にいたる諸状態について,これを表現する用語として,軽いほうから明識困難,昏蒙,傾眠,嗜眠,昏迷,半昏睡,亜昏睡,昏睡,深昏睡などがあります。さらに昏睡の先には,病気の種類と程度によって,死亡するか,完全な健康状態ないし知能低下をのこす状態に回復するか,もしくは植物状態に移行します。植物状態とは,呼吸や心臓機能が保たれ,栄養補給によって長期間生存が可能な状態をいいます。障碍された脳の部位や範囲によって状態はいろいろですが,一般に植物状態では,睡眠・覚醒リズムが一応保たれ,対象を目で追うことはできるものの,周囲からの働きかけに対し,言葉や表情による応答がほとんどできない点が共通して存在します。

表-3 意識混濁の種類
【程度】【種類】
軽度 明識困難 一見,意識清明にみえるが,よく観察すると
 |      注意力や集中力,軽度の認知障碍を認める。
 |      感情が不安定。動作が緩慢。
 |
 | 昏  蒙 失見当職,健忘が認められる。思考は散乱し
 |      了解は悪い。自発性や集中力はほとんどない
 |
 | 傾  眠 自発的な行動を示すことは少なく,刺激を
 |      与えないと入眠してしまう。
 |
 | 嗜  眠 強い傾眠傾向。自発的な発語や行動はほとん
 |      どない。刺激を与えても十分には覚醒しない
 |
重度 昏  睡 自発的な運動は全くみられない。強い痛覚刺
        激にも反応を示さない。対光反射,睫毛反射
        角膜反射は消失する。

2)意識変容
①もうろう状態
【症状】意識を照明にたとえるならは,意識混濁が照明の明るさが低下するもの,意識変容は照明の色が異常になるものと言えます。このうちで,意識狭窄は,意識野つまり意識が広がる範囲の障害といえます。もうろう状態とは意識混濁よりも意識狭窄が目立つ意識変容と呼ばれるものです。その発病と消退形式は急激で,正常な意識の時間経過中に,突然異なる意識状態が挿入されたものとして現れ,激しい興奮や逸脱行動を示すこともあります。

【病因】このもうろう状態は,心因性,てんかん性,病的酩酊,頭部外傷などによって生じますが,心理的原因の場合は意識混濁の関与は稀溥である野に対して,頭部外傷など器質的異常が背景にある場合では意識混濁の関与も大きいものがあります。

②せん妄
【概要】せん妄とは軽度の意識混濁を基底として生じる意識変容の一つであり,認知機能の低下,思考の散乱,幻視などの幻覚,錯視などの錯覚,錯乱などを伴う急性で変化する症状群です。

【病因】せん妄が起こる要因は加齢や中枢神経疾患などの基礎的要因と,身体的侵襲,電解質や代謝異常,薬剤の影響なとの直接的要因に分けられます。せん妄の診断においては,意識混濁の存在,急性の発症形式,動揺性の経過(せん妄は夜間に増悪することが多い)を確認することが重要となります。

【症状】意識障碍が重度の場合には,内科や脳外科の領域になることが多く,精神医学が関係するのは,せん妄と呼ばれる精神症状が出現したときです。せん妄は,覚醒レベルの軽度低下に伴ってさまざまな精神症状が出現した状態で,具体的な症状としては,見当識障碍と注意力障碍を中心とした認知障碍,症状の日内変動,幻視を中心とした幻覚,不安や興奮が主要なものです。注意力を調べるためには,簡単な計算課題(たとえば100から連続して7を引き算する課題),順唱課題(数列を聴覚的に提示して直後に反復してもらう課題)などがあります。見当識を確認するには,場所,日時,人物のような経時的に変化する項目に関する認識の有無を調べます(せん妄の最中には,入院中でありながら自宅にいると思っている,夜なのに朝だと思っている,看護師を妻と間違えているなどの見当識障碍が出現)。

 せん妄は,認知症(アルツハイマー型認知症など),中枢神経疾患(脳血管障碍,脳腫瘍,頭部外傷,パーキンソン病など),アルコ-ルや薬物の依存(離脱せん妄,振戦せん妄)を有する患者に特に出現しやすいようです。また,手術後患者にもしばしば認められ,術後せん妄と記述されることもあります。症状には,日内変動があることが特徴であり,夜間せん妄や黄昏症候群という言葉の存在が示すように,夕方から夜間にかけて悪化することが多くあります。症状の変動のために,調子のいいときに患者を診察しただけでは問題を捉えることができないことも多く,調子の悪いときとの格差こそが重要な所見とも考えられます。

 患者はせん妄経過中の出来事をほとんど覚えていないことが普通で,いくらか覚えていたとしても記憶は断片的といえます。このため,せん妄の診断には,家族や看護師など患者の様子をよく知る人からの情報が不可欠です。せん妄は,認知症または何らかの基礎疾患を有する患者に出現することが多いものの,原因は多岐に渡っており,実際の臨床ではせん妄の原因を一つに絞り込めないことも少なくありません。

【意識障碍の症状】せん妄

【概 要】
 せん妄は急性の神経認知障碍の1つであり,注意の障碍・認知障碍が短期間(数時間~数日)のうちに発現することを特徴とします。周囲の状況への見当識障碍が時間とともに変動する傾向を伴っています。せん妄は,医学的疾患,物質中毒と離脱,毒物への曝露などによる直接の生理的影響の結果として,また複数要因の関与から生じます。

 せん妄は入院患者に発症することが特に多く,入院患者の10~15%にせん妄が発症すると見られており,せん妄患者の40~50%は1年以内に死亡すると推定されています。特に80歳以上の高齢者,すでに発症している認知症,手術直後,骨折,全身感染症,睡眠薬や抗精神病薬の最近の服薬などが,せん妄のリスク要因となります。

 せん妄の特徴は,見当識障碍(場所,時間,人物),錯乱,全般的認知機能障碍が急速に出現することです。ほかにも,意識障碍(状況把握の明識困難が特徴),注意の障碍(注意の集中・維持・転導することの困難),認知障碍,知覚変容(錯覚など)が挙げられます。患者の精神状態は,時間経過とともに変動しやすく,一見,正常に見えたかと思いきや,次の数分後には急激に悪化して幻覚が出現することもあります。また,睡眠覚醒リズム障碍(夜間の増悪を伴う日没現象),滅裂,不穏,焦燥,過度の傾眠などがあります。

【症 状】
●中核症状
 せん妄についての概念は,幻視などの夢のような体験が急性・一過性に出現し,感情や行動が激しく不穏な状態を呈するものです。せん妄終了後に,せん妄についての健忘が残ることも典型的な症状といえます。

●一般症状
 意識水準の低下にかかわらず,感情や行動が活発な状態が基本と言えます。軽いときは周囲と接触を保とうと努めますが,困惑や思考散乱が顕著です。軽いせん妄状態として,アメンチア(聞き手も相手が何を話したいのかよくわからない),もうろう状態(目的もなく呆然として歩きまわるような状態),分別もうろう状態(数日間も支障なく旅行ができるような状態)などがあります。また,話があちこち飛ぶ,理解できない行動をとる,意識混濁,錯乱といった状態もあります。

 さらに症状が重くなると,「まわりの人や物や情況を誤認する」「不安や怒りにかられて,大声をあげたり,人に抱きついたり,突きとばしたりする」「制止されると,ますます興奮する」など,感情も言語も行動もまとまりがなくなってきます。「壁のしみを人の顔と見まちがえる」「窓に幽霊を見て恐ろしがる」「昆虫が列をつくってベッドにはい上がってくると言って,逃げ出したり,振り払おうとしたりする」など,錯視や幻視が盛んです。「漁師が舟をこぐ動作」「事務員がキーをたたく仕草」など,仕事で慣れた行動をとる『職業せん妄』が出ることもあります。

 また睡眠・覚醒リズムが失われ,昼夜が逆転して,夜間に騒いで昼間は眠っていることも多くなります。記憶は全体として不鮮明ですが,幻覚の内容などを覚えていて,あとで確認すると再現できることもあります。

●特徴的な症状(鑑別)
 昏睡にくらべて,せん妄に特徴的なのは,意識障碍が軽い状態から急に重い状態に,あるいは逆方向に,短時間で急速に変動することです。感情面でも,怒るかと思うと泣き,無表情な態度から急に不安な様子をみせるなど,変化がはげしいことが挙げられます。変化が急であることで,意識障碍の症状の程度や内容からせん妄を分類することは困難といえます。また,重い認知症を呈する患者には,一過性にせよ,せん妄がほとんど常に合併しておこります。

 統合失調症や気分障碍により生ずる錯乱状態(精神運動興奮)との区別ということでは,せん妄患者はより急性に発症する傾向があり,精神機能全般が混乱していて,特に「注意」が強く障碍されています。幻覚症状が存在するとき,精神病患者では「幻聴」が認められることが多いのに対して,せん妄の患者では上記にある「幻視」や「体感幻覚」であることが多く,その幻覚は断片的で,系統的ではありません。また,せん妄患者は精神疾患の既往歴や家族歴(家族のせん妄患者)を有していないことが普通です。しかし,精神疾患の既往歴のあることが,せん妄の可能性を除外するものではありません。

【病 因】
 せん妄そのものは,急性の緊急事態であり,疾患としての病気ではなく症候群として,つまり,原因疾患が存在しそこから発生する症状としてとらえることが重要です。すなわち,ただちに原因疾患についての身体的異常を検査する必要があることを意味しています。原因疾患には,感染症,熱性疾患,低酸素,低血糖,薬物中毒,薬物離脱,肝性脳症などに伴った代謝異常などが存在します。中枢神経系の異常に起因したせん妄に多い原因は,脳膿瘍,脳卒中,脳外傷,てんかん発作の発作後の状態などがあります。高齢者に多い原因疾患には,不整脈の発症初期(例えば,心房細動)や心筋虚血などがあります。

【症状の経過】
 せん妄がある患者の大多数は,治療の有無にかかわらずせん妄からの回復が可能で,早期発見と治療によってせん妄の期間を短縮することができます。せん妄の経過は,原因となる疾患の経過および心身両面のストレスによって左右されます。特にその基礎となる疾患が未治療ならば,昏迷,昏睡,けいれん,さらに死へと進展していく可能性があります。入院中のせん妄患者の致死率は高く,せん妄患者の40~50%,特に悪性疾患や他の重大な基礎的疾患がある患者は,1年以内に死亡すると推定されています。

【診断基準】

◎この診断基準は,要点をまとめたもので,正確な記述については,「医学書院版 DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」をご参照下さい。

○せん妄
 せん妄の本質的特徴は,既存もしくは進行中の神経認知障碍ではうまく説明できないような,もとの認知水準からの変化を伴った注意や意識の障碍である。
【診断基準】
A.注意の障害および意識の障害
  注意の障害・・・・注意の方向づけ,集中,維持,転換する能力の低下
  意識の障害・・・・環境に対する見当識の低下
【解説】注意の障碍は注意の方向づけ,集中,維持,転換する能力の低下として現れる。患者の注意が揺れ動くために質問を繰り返さればならなかったり,患者は適切に注意を転換するよりも前の質問への回答にこだわって(保続して)いるかもしれない。患者は無関係な刺激に容易に注意をそらされる。
 意識の障碍は,環境,時には自己に対する見当識の低下として現れる。

B.持続期間
  障害は短期間のうちに出現(通常数時間~数日)
  1日の経過中で重症度が変動する傾向
【解説】障碍は短期間のうちに出現し,通常数時間~数日続き,1日のうちで変動する傾向があり,外から見当識をつける刺激が減少する夕方や夜間に増悪することが多い。

C.認知の障害を伴う
  認知の障害・・・・記憶欠損,失見当識,言語.視空間認知,知覚など
【解説】記憶と学習(特に近時記憶),失見当識(特に時間や場所),言語の変化,または知覚変容,知覚運動障碍などの1つの領域での変化が伴う。せん妄に伴う知覚障碍には,誤認,錯覚,幻覚があり,これらの障碍は典型的には視覚に関連したものであるが,他の知覚でも同様に起こりうる。単純で均一なものから高度で複雑なものにまで及ぶ。

D.神経認知障害の排除
  基準A・Cに示す障害は,神経認知障害では説明できない
  昏睡のような覚醒水準の著しい低下した状況下で起こるものでない
【解説】せん妄は,しばしば神経認知障碍が潜在するという状況で起こる。軽度認知障碍および認知症では,よりせん妄になりやすい脆弱さをもっている。せん妄と診断するための認知の評価は,言語的な刺激に十分反応しうるだけの覚醒水準にあるかどうかに左右される。したがって,せん妄は昏睡のような状況では診断すべきではないものとされる。

E.身体疾患・薬物中毒による障害
  病歴,身体診察,臨床検査所見から,障害が基礎となる医学的疾患
  物質中毒または離脱,または毒物への曝露または複数の病因による
  直接的な生理学的結果により引き起こされたという証拠がある