疾患解説

 解説・・・・背景要因











 性格や精神疾患の背景要因を解説します。

解説・・・・背景要因

疾患解説のご案内

性格や精神疾患の背景要因の解説は,こちらからどうぞ。

性格や精神疾患の背景要因

【現在の症状】

 うつ病,対人恐怖や強迫性障碍のような精神疾患,あるいは,被害妄想的な性格,いらつきやすい性格など, こうした現在の状態を症状としてとらえることができます。
 精神医学では,基本的にこの現在の症状を丁寧に詳細に取り扱うスタンスを取っています。 精神疾患の器質的な原因がまだ解明されていないということが,その要因となっており, この結果,現在の症状をいかに緩和するかが,主要な治療目的となっているのです。

【症状としての行動パターン】

 現在の症状に密接に関係するのが,行動パターンです。 様々な状況や出来事,相手の態度に対して人は反応しますが,その中にその人特有の反応を示す部分があります。 これは生まれてから今までの人生の中で,次第に築き上げられたものであり,それが様々な状況に出くわして,行動パターンとなるのです。 この行動パターンを解析することが,現在の症状の発生した原因をつかむ手がかりになると考えられます。
遺伝的要因: 遺伝的性格が行動パターンに影響を及ぼします
 解析された行動パターンが,どのようにして育まれてきたのかを考える上で,2つの要因が検討されます。 ひとつが生まれ育った環境的要因であり,もうひとつが遺伝的要因です。 遺伝的要因が,直ちに行動パターンとなり発症する訳ではありませんが,環境的要因を育む下地を作り上げるという点で,大きな意味を持っているのです。

 症状・特定の行動パターンがあるとき,特定の脳内物質(神経伝達物質)が出やすい・出にくいという器質的な状態が,そこには存在しています。 いわゆる器質的な意味での体質ということになるのですが,そうした状態は遺伝的要因が大きく作用していることが考えられます。 つまり,遺伝的要因が体質的な脆弱性を生みだし,環境的な要因がそこに作用して,行動パターン・症状が生み出されてくるという構図ができあがります。

【脆 弱 性】

 近年,多発している地震や津波のケースを見ていると,被災された方々の中で同じ状況下にあっても,PTSDを発症される方とそうでない方がおられます。 幼少期からの体験の違いという事もありますが,多くの場合,生まれもったものの違いに依るところが大きいようです。 つまり,DNAの配列,特定の遺伝情報の組合せが一定の形質を作り出すことになり,それが脆弱性を生み出すことにつながるのです。

【神経伝達物質】

 遺伝的要因が作り出す脆弱性は,具体的な器質要因として神経伝達物質の状態という形で出現します。 大脳皮質にはニューロン(神経細胞)が多数存在し,そのニューロンごとに神経伝達物質を内包しています。 そうしたニューロンが互いに結びついて,知識の記憶や思考・判断が行われるのですが,ニューロン間の情報伝達の際に神経伝達物質が使用されるのです。 ここで,遺伝的要因からくる脆弱性がキーポイントになります。 脆弱性という形で,特定の神経伝達物質が出やすい・出にくいという状況が出現し,その結果が行動パターンに結びついてくることになる訳です。 遺伝的な性格が行動パターンを作り上げることに影響を及ぼすと言うことになります。
環境的要因: 環境への対応が行動パターンの元になる信念を形成
 人は幼少期から環境の中で育ちます。どんな土地柄,どんな両親に育てられ,どんな家庭環境でどんな家族の中にあるか, どんな学校や先生でどんな仲間に囲まれているか,どんなことに興味を持ちどんな活動をしてきたか,そうした環境が本人に影響を与えています。 この中で育まれた思考のクセが,信念という形で形成されてくるのです。

 この信念が無意識下で,本人の活動を良かれ悪しかれ拘束するようになってきます。同じような状況では同じような反応を繰り返すようになるのです。 こうしたくり返しの中で,無意識に学習されたことが定着し行動パターンとなってゆくのです。

【中 核 信 念】

 信念の形成をもう少し詳しく見ていきましょう。人は状況や出来事に直面すると反応を起こす訳ですが,反応した思考や行動自体が一定の感情を生み出し,その感情に基づいて反応の結果を評価します。 この評価は「自分はこれが苦手である」とか「こんな時は別の方法をとるべきだった」あるいは「自分は他人からこう思われているんだ」といった形のものです。 こうした評価が,多年にわたり数多く集積してくると,単に「苦手」という考えが次第に「能力がない」といった確信のレベルにまで高まってくるのです。 この確信は,実際に本人に「能力があるかどうか」という事実の検証とは全く関係のない次元で展開されていきます。 こうした確信を「中核信念」と呼んでいます。この中核信念が本人の考え方や行動に一定の方向性を与えることになります。これが行動パターンとなる訳です。

【悪 循 環】

 形成された中核信念が,無意識下で行動パターンを繰り返すようになりますが,これが本人や周りの人間にとって,良い影響を与える場合には問題とはなりません。 行動パターンが定着し,それが本人や周りの人間に不快や悪影響を及ぼすとき,これが悪循環となって本人に襲いかかるのです。この悪循環には,2つの質のものがあります。 ストレスから過食をするようになり,過食で太ることを気にして吐く(パージング)行動をとる,そのことが自己嫌悪になってさらに過食が進むというような,現象や事実の面での悪循環があります。 また,特定の考えが行動を引き起こし,そこから特定の感情が生まれ,その感情に引きずられて,特定の思考がさらに加速してしまい,そこから行動や感情が繰り返されるといった, 思考や感情・行動の連鎖という意味での悪循環となる場合もあります。こうした悪循環そのものが,症状としての行動パターンの実体とも呼べるものとなります。
認知行動療法

 認知行動療法による治療改善を行う場合には,こうした遺伝的要因や環境的要因を,症状の背景要因として十分に査定・アセスメントし, どの部分に介入することで悪循環が解消するのか,学習された症状としての行動パターンをどう修正することが可能なのかを検討していきます。 これが,臨床としての現場の最前線で,症状を概念化し治療改善することとして行われている事なのです。

 特に,最新の第3世代認知行動療法においては,背景要因の分析の局面で緻密なデータによる分析が重要視されてきています。 「苦手である」から「能力がない」と確信することを,社会通念的に妥当といった形で判断したのが第2世代的な理論でしたが, 「本人が状況のどこに焦点を当てて考えたのか」「苦手だという認識は本人がどういうデータに基づいて判断したのか」 「能力がないと確信に至るのにどんな環境要因がデータ的に存在したのか」といった基礎データを収集し判断します。 また,「選択された行動」についても,本人の置かれた状況(環境)から様々な行動が選択される関係性(可能性)はどのくらいあるのかといったデータに基づき, 選択された行動の問題性が検討されていきます。

 認知行動療法も日進月歩で変化を遂げています。より緻密なデータに基づき,科学的に検証された治療法で,症状や行動パターンが改善されていく方法がとられています。